平成16年1月より「公募株式投資信託」の新税制がスタートしました。今回はこの税制がどんなメリット、デメリット、問題点を持っているか取り上げてみたいと思います。まず、おおまかにですが、新税制のポイントをまとめてみます。
まず、今回の新税制が適用されるのは公募株式投資信託ですので、MRFやMMFなどの公社債投資信託は今回の税制変更の対象にはなりません。ここで注意しておきたいのが投資信託の種類が名称だけでははっきり区別できない点です。管理人の保有しているPRUアメリカ中期社債ファンド(毎月分配型)も名称に「社債」とついているにもかかわらず、分類上は株式投資信託に分類されています。(かなり損失が出ているので今回の新税制の恩恵を受けられるのは大変ありがたいです♪)そこで、自分が保有している投資信託が「公募株式投資信託」に分類されるか、「公社債投資信託」に分類されるか目論見書を見て確認してみるとよいでしょう。それでもよくわからない場合は自分が取引を行っている証券会社や委託会社に確認してみるいい機会でしょう。
次に、公募式株式投資信託についての新税制が具体的にどのようなものになっているか損益通算と税率という点に着目して見ていきましょう。まず、税率についてですが収益分配金および解約・償還益について株式の配当並みの課税になります。(非上場株式投資信託を買取請求した場合を除く)買取請求をすることはめったにないのでほぼ、株式投資信託と株式の違いは税率に関してはなくなったといってよいでしょう。具体的には、表1のとおりですがここで注意しておきたい点をまとめておきます。(解約請求をする場合の注意点は以下の注意点を参照)
収入の発生時 |
公募株式投資信託
(平成15年まで) |
公募株式投資信託(新税制) |
公社債投資信託
(変更なし) |
上場 |
非上場 |
期中分配金
(国内・外国籍) |
20%
源泉分離 |
10%(20%)
源泉徴収・申告不要 |
10%(20%)
源泉徴収・申告不要 |
20%
源泉分離 |
解約差益
(国内籍) |
20%
源泉分離 |
|
10%(20%)
源泉徴収・申告不要 |
20%
源泉分離 |
売却
(国内・外国籍) |
非課税 |
10%(20%)
申告分離 |
26%
申告分離 |
非課税 |
償還差益
(国内・外国籍) |
20%
源泉分離 |
10%(20%)
源泉徴収・申告不要 |
10%(20%)
源泉徴収・申告不要 |
20%
源泉分離 |
()内は優遇期間経過後の税制
期中分配金は特別分配金(非課税)を除く
つぎに、損益通算に関してですが、非上場の株式投資信託に関して、解約差損は通損可能(1年間のみ)だが、解約差益は通損不可能という理解に苦しむ制度となっています。それに比べ、上場株式投資信託には非上場の投資信託に比べて以下のような相違点があります。
はっきりいって、圧倒的に上場株式投資信託のほうが有利です。なんと言っても、目玉は3年間の損失繰越が認められるのは大きいと思います。(外国株式投資信託に関しても上場していれば上場株式投資信託と同じ取り扱いとなる。)上場株式投資信託と非上場株式投資信託の損益通算に関してはいかの表のようになっています。
最後に、管理人が投資信託の税制で不満に思っている点をあげておきます。
(1)株式投資信託の解約・償還損と他の株式投信の解約・償還益との通算はできない
(2)非上場の外国籍株式投資信託は上場外国籍株式投資信託と比べて著しく不利である。
(3)株式投資の申告分離課税では売買のときに投資家が負担する委託手数料と消費税は純譲渡益から差し引けるが、株式投資信託を購入するときに投資家が負担する申し込み手数料と消費税は損益の計算では考慮されない。
株式同士の通算は可能なのになぜ株式投資信託には許されないのでしょうか?政府は株式投資信託に恨みがあるのでしょうか?なお、このような複雑奇怪な税制を改めて、ぜひシンプルな税制にしていただきたいものです。(以下の表は複雑奇怪な損益通算の一覧表です。)
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株式投資信託 |
上場 |
非上場 |
期中分配金 |
損益通算不可(国内・外国籍) |
解約差益 |
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損益通算不可(国内籍のみ) |
解約差損 |
損益通算可 |
償還差益 |
損益通算不可(国内・外国籍) |
償還差損 |
損益通算可(国内・外国籍) |
売買損益 |
損益通算可(国内・外国籍)
*国内籍は買い取り請求、外国籍は買い戻し請求の場合 |
*参考資料:
「公募株式投資信託」の新税制のお知らせ。(野村證券のリーフレットより)
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